複数ポータルに分散していたイントラ情報をLiferayで集約
「置いてある」から「届く」仕組みへの移行で閲覧頻度が大きく向上
15,000人
社員
26,000人
グループ会社
以前は必要な情報を得るためには地区ポータルにアクセスし、その中で情報を探し出さなければなりませんでしたが、欲しい情報が個々の TOP 画面の一覧に出るようになったことですぐに確認できるようになりました
デジタル化推進部
サマリー
日本を代表する製鉄会社のJFEスチールは、日本ライフレイのLiferay PaaSを活用し、国内の各製鉄所・製造所ごとに個別最適で構築していた社内のポータルサイト環境を統合しました。
主要指標
- ユーザーのポータルアクセス率が従来比175%に向上
- 複数のポータルによる情報分散からの脱却
- 地区ごとにフィルターをかけるなど、細やかなフィルタリング機能を実装
重要なポイント
- 情報を探しに行かなくてもトップページ上に必要な情報が表示される情報ポータル環境を実現
- トップページのカスタマイズにより各自が欲しい情報を選択可能に
- ユーザー参加型のデザインスプリントで事前に合意形成し、手戻りのない開発を実現
事例開発のパートナー企業
JFE システムズ株式会社
株式会社エイジング
情報を必要な人に届けるポータル基盤への刷新
JFEスチール株式会社(以下、JFEスチール)は、世界トップクラスの生産規模を誇る大手鉄鋼メーカーです。「常に世界最高の技術をもって社会に貢献します」という企業理念のもと、お客様や社会のニーズに応える鉄鋼製品を国内外へ提供しています。IT・デジタルの活用にも積極的で、製造ノウハウと最新のデジタル技術を融合させる取り組みが高く評価され、経済産業省が毎年選定するDX銘柄に10回選出(2025年時点)されています。
同社は西日本と東日本に大型製鉄所を保有し、そのほかにも国内2か所に製造所を保有しています。
こうした複数拠点にまたがる事業体制のもと、社員がアクセスするポータルには各製鉄所・製造所(以下、地区)ごとに別々の情報が発信されています。その中で現在、社内各種システムへのリンク、社員向けのお知らせ、人事報、社内規程などを掲載した約750ページからなる社内ポータル環境を
Liferay PaaS上に構築し、それを本社の約15,000人、グループ会社の約26,000人が利用しています。
地区ごとにポータルが存在し閲覧数が伸び悩み
JFEスチールでは以前、社内イントラネット上に地区ごとの専用のポータルサイトが用意されており、ほかにもJFEスチール向けポータルやグループ会社向けポータルなど、複数のポータルが運用されていました。さらに当時は地区ごとにポータルをMicrosoft SharePointで独自に開発していましたが、サイトデザインやUIの統一性もなく、一部では独自に開発した古いサイトも残っていたため、ユーザーは情報がどこにあるのかわからず、見たい情報になかなかたどり着けない状況でした。
その結果、閲覧頻度が下がって利用率が停滞。さらに、情報を発信する側も社内イントラに情報を掲載しても対象者に十分届かず、発信者が「情報を掲載したのでこのリンク先を見てください」という通達をメールで送るという非効率な作業が発生していたといいます。
JFEスチール DX戦略本部 デジタル化推進部の担当者は「情報が届かないことは大きな問題だと感じ、社内ポータル環境の見直しをすることに決めました」と当時を振り返ります。
利用者起点で要件を整理し、Liferayを採用
2022年から移行検討作業を開始し、まずポータルサイトの設計についてデジタル化推進部内で検討を行い、「それぞれが1か所にアクセスすれば必要な情報が入手できるページを用意する」という方針を決定しました。その際には、発信された情報を全てページに載せてしまうと情報過多で閲覧されなくなることが懸念されたため、所属する地区や興味のある情報を自ら選んで表示できるような形としました。
画面要件を絞り込むにあたっては、各実務部門のユーザーや関係者を集め、デザインスプリント方式(※)でユーザーニーズを整理し、課題解決策を仕様へ落とし込みました。
その結果、地区や利用者属性に応じて必要な情報のみを表示し、1画面で効率よく確認できるポータルデザインを策定しました。そのように画面要件を固めたうえで、実際にシステムを構築するにあたり、「仕様を具現化できるもの」、かつ「多くの企業で採用実績のあるソリューション」という2つの要件のもとでプラットフォーム製品を複数検討し、総合的な評価の結果、Liferay PaaSを採用しました。選定の主な理由についてデジタル化推進部では、「『用意した画面デザインを再現できる機能性』および『カスタマイズを含めた自由度の高さ』と、『コスト面』が決め手となりました」と説明します。
※欄外注釈
デザインスプリント方式:アイデア出しからプロトタイプの作成・ユーザーテストまでを最短5日間で完了させる課題解決のフレームワーク
標準機能にカスタマイズを加えて独自要件に対応
その後2024年1月からシステム構築のプロジェクトを開始。デジタル化推進部をプロジェクトマネージャー(PM)に、グループ内システム開発会社のJFEシステムズと日本ライフレイパートナーのエイジングが開発を担当し、Liferayの標準機能にカスタマイズで機能追加する形で開発を進めました。事前に社内の合意形成のもとで詳細な画面のイメージを用意していたこともあってプロジェクトは手戻りなく進みましたが、カスタマイズ開発の際にいくつかの工夫が必要だったとメンバーは振り返ります。
まず対応が必要だったのが、スマートフォンやタブレットからのアクセスでした。PaaS製品ということで、IP制限で必要な場所からしかアクセスできないように制御していたため、スマートフォンやタブレットからのアクセス時にIPアドレスの固定化ができないという問題が生じましたが、「統合ID管理基盤と連携して、必ず認証を通る形にすることで解決しました」と開発担当者は話します。
最も苦労したのが、個人に対して1ページに情報を表示させるためのフィルタリングだったといいます。事前の設計では「地区フィルター」によって発信者がどの地区に届けたいかを設定できる機能を実装し、不要な情報を減らし的確に情報が表示されるようにするという形でしたが、「標準機能だとフィルターの細かい条件が足りず、地区内での権限設定と掛け合わせて表示することができなかったため、全社ポータルと地区ポータルを用意して個人の画面に必要な情報を統合表示するようにすることで解決しました」と開発担当者は述べています。
そのほかに、アプリケーション権限管理システムと連携させて各人が利用できる社内システムへリンクできるようなカスタマイズ開発も実施し、2025年4月から新しいポータルが稼働しました。
ポータル統合で利用率と情報到達性が向上
2025年4月から半年かけて地区ごとに掲載情報の見直しとポータル上への情報の移行作業を行い、2025年10月から本格的に新しいポータルの利用が開始されています。
導入成果としては、ユーザーへのアンケートからは、「ポータルが見やすくなって違和感なく使えている」「各部署の発信情報にアクセスしやすくなった」「デザインがシンプルで良い」などの回答を得たとのことです。情報発信者からも、お知らせの投稿がどれだけ見てもらっているかを確認できるようになり、利便性が向上したとの声が聞こえているといいます。
「情報発信者は地区ごとに情報を発信することができ、ユーザーもフィルターをかけて見たい情報を選択し、自分なりにお知らせの一覧を作ることができます。以前は必要な情報を得るためには地区ポータルにアクセスし、その中で情報を探し出さなければなりませんでしたが、欲しい情報が個々のトップページに表示されるようになったことですぐに確認できるようになりました。具体的な利用者数も、メインで利用する社員が以前は7,400人/週だったのに対し、現在は13,000人/週と75%増加しています」(デジタル化推進部)
生成AIの活用をはじめさらなる機能拡充を目指す
新たなポータルでは、アクセス面のほかにもさまざまな部分で利便性が高まっています。例えば、ID連携機能により、異動した際も自動的にアクセスできる地区ポータルが変更されるようになっているほか、東京本社の社員が他の地区に常駐する際などに複数のエリアを選択できるような柔軟性も備わり、多くのワーカーの業務プロセス改善にもつながりました。
JFEスチールでは、今後もポータルの利便性向上を図っていく構えです。「今回の構築はゴールではありません。フィルタリングの粒度を含めてUIの向上にも継続的に取り組み、機能面では生成AIで情報を探しやすくするようにしたいと考えています。そのために、引き続き3社の連携体制のもとでポータルを成長させていきます。Liferay社には、標準機能の拡充と事例の共有を期待しています」(デジタル化推進部)