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最新のCMSで公共サービスの高度なパーソナライゼーション機能を強化
政府DXを次の段階へ:一人ひとりに合わせたセルフサービスを実現
目次
主なポイント
- 公共サービス業界ではデジタル化が進んでいるものの、新技術の採用や推進に遅れを取っており、市民にまで効果的にサービスが行き届いていない。
- 最新またはヘッドレスコンテンツ管理システム(CMS)と従来またはレガシーCMSの主な違いは、ヘッドレスCMSではプレゼンテーション層(フロントエンド)からコンテンツリポジトリ(バックエンド) を分離することで、開発者は好みのシステムを、マーケティング担当者は無制限にカスタマイズ可能なツールを、使うことができる点である。
- 高度なパーソナライゼーション機能は、すべてのユーザー(市民や公務員など)に対する、政府のデジタルエクスペリエンス(DX)の課題を解決する鍵となる。
- 最新の(またはヘッドレス)CMSのみが、その柔軟性から、極めて高度にパーソナライズされたエクスペリエンスを実現できる。
- 組み込みのパーソナライゼーション機能が必要で、より戦略的な投資を行いたい場合、最新のCMSを備えたDXPが最適である。
公共部門に必要なより優れたデジタルエクスペリエンス
10年ほど前、ロンドン技術・イノベーション局のエディ・コープランド局長(リンク先:英語)は、「公共サービスがAmazonのようなサービスを提供したら、どうなるだろうか。」という疑問を抱きました。残念ながら、10年経った今でも、多くの政府関係者が同じ問いを発しています。というのも、世界中の政府機関におけるDXへの取り組みが、お役所的な手続きが少なく投資力のある他の産業に比べて遅れているためです。
デジタルソリューションが効率改善にどう役立っているかについて、1,400人の政府リーダーを対象に行った最近の調査(リンク先:英語)では、大幅な成長が見られる分野と、依然として課題が残る分野の両方が明らかになりました。その調査結果の一部をご紹介します。
成長分野
- エンゲージメント:現在、政府事業エンゲージメント担当者の約70%が、デジタルプラットフォーム上で市民とのやり取りを行っている。
- 業務:住民との対話の場(集会や意見交換会など)、公的記録の管理、情報の透明性のような分野でデジタル化が大きく進展している。
- 行政サービスの提供:オンラインフォームの完了率が80%上昇し、請求書の支払いや許可申請などにセルフサービスを利用する市民が増加している。
未解決の課題
- エンゲージメント:依然として多くの市民がデジタルサービスから取り残されており、公共サービスのWebサイトの全体的な有効性が制限されている。
- 業務:公的記録は、請求件数が増加しただけでなく、ファイルサイズも増大したため、過去5年間だけでも複雑さが50%以上も増加。さらに、政府機関の80%が、公的な会議の際にクローズドキャプション(字幕)といった基本的なアクセシビリティを提供していない。
- 行政サービスの提供:自動化やAIなどの最新ツールが、デジタルシステムに有意義に統合されていない。また、市民はより良いエクスペリエンスを声高に求めているが、政府機関にはその要求に応えるための内部リソースが不足していることが多い。
しかし、こうした課題以上に深刻なのは、ソリューション自体のデジタル基盤が不十分で、維持が困難であるということです。
レガシーシステムの弊害:デジタル基盤の弱体化
2023年のレポートによると(リンク先:英語)、米国政府だけでITに1000億ドルもの驚異的な経済投資を行っています。そして、このうち「政府機関は、通常、レガシーシステムを含む、既存ITの運用と保守に約80%も費やしていると報告」されています。これには、既知のセキュリティ脆弱性があり、サポート対象外となっているシステムも含まれます。
驚くことに、少なくとも50年前の技術コンポーネントを有するシステムが含まれていることが、この報告書で明らかになりました。
こうした技術の遅れと最新化の欠如は、リスクが最小限の低価値なシステムにだけ影響を及ぼしているわけではありません。最も重要となる政府システムの一部でさえ、時代遅れあるいは安全でないシステム上に構築されているのです。
行政機関に勤務している、または政府の規制を受ける民間企業に勤めている場合、レガシーシステムに伴うこうした課題は、気が滅入るほど頻繁に起こる課題として受け止められるかもしれません。欠陥がある、あるいは危険にさらされたデジタル基盤で、市民、ビジネスパートナー、サプライヤー、そして従業員からのAmazonのような高い要求に、どう応えることができるでしょうか。
最新のCMSとは
最新のCMSでは、デジタル基盤の修復またはリプレースをサポートするため、より質の高い、安全性を強化したWebエクスペリエンスを構築し、今後の公共サービスを推進していくことができます。
CMSとは、最小限のコーディングで、もしくはコーディングなしで、ユーザーがコンテンツの作成、編集、管理を容易に行えるようにする技術であり、ユーザーに寄り添う機能を最優先にしています。CMSは、市場投入までの期間を短縮するだけでなく、ITリソースをより効果的に配分することができ、最新の(またはヘッドレス)CMSは、特に、この使いやすい機能を強化するために設計されています。(リンク先:英語)
ヘッドレスCMSと従来(またはレガシー)CMSとの大きな違いは、コンテンツが最終的にユーザーにどう表示されるかという点にあります。レガシーCMSでは、バックエンドとフロントエンドを密接に結びつけています。事実、レガシーCMSでは、コンテンツ作成、ファイルストレージ、管理、および表示がすべて同じ場所で処理されるため、しばしばモノリシックであると言われています。この点が原因で、時間の経過とともにレガシーCMSの維持管理が困難になる可能性があります。
一方、最新のCMSは、フロントエンドとバックエンドを分離し、APIにより、Webサイト、モバイルアプリケーション、キオスク、ウェアラブルデバイスなど、あらゆるフロントエンドアプリケーションにコンテンツを送信します。
最新のCMSと従来のCMS
この違いは、ユーザーレベルと政府機関レベルでの成果に大きな影響をもたらします。
| 項目 | 最新CMS/ヘッドレスCMS | 従来/レガシーCMS | 公共サービス向けアプリケーション |
|---|---|---|---|
| テックスタック | 開発者は自身で選択したシステムを使用可能。 | 開発者は特定のシステムのみ使用可能。 | 政府機関ではITリソース(リンク先:英語)をアウトソースすることが多い。開発技術の柔軟性が高まったことで外部の機関と連携しやすくなっただけでなく、官庁内のIT担当者にも使いやすいツールや環境を提供。 |
| コンテンツのカスタマイズ | マーケティング担当者は、パフォーマンスを損ねることなく、無限にカスタマイズ可能な機能を入手。 | カスタマイズは可能だが、時間の経過とともにパフォーマンスに悪影響を及ぼし、保守管理がますます複雑になる可能性がある。 | 既に処理速度が低下しやすく、メンテナンス予算が限られている公共部門は、パフォーマンスの向上というメリットを享受する。 |
| コンテンツ配信 | オムニチャネルコンテンツ配信により柔軟性が向上。 | 複数チャネルへの配信は難しい。 | ある機関が、コンテンツをモバイルアプリや公共のキオスク端末で公開したいと考えても、CMSが最新ではない場合、その機関はチャネルごとに別々のプラットフォームを使用しなければならない。 |
| 開発 | 開発の柔軟性が向上(フロントエンドとバックエンドの更新が個別に行われる)。 | システムが非常に密接に結合しているため、フロントエンドまたはバックエンドのどちらかに変更を加えると、すべてに影響が及ぶ。 | 政府機関においてはユーザーエクスペリエンスが非常に重要であるため、軽量で高速なフロントエンドを持つヘッドレスソリューションが特に役立つ。 |
| コンテンツのプレビュー | 他のアプリケーションを統合しなければ、コンテンツをプレビューする手段はない。 | CMSのUIを介してコンテンツのプレビューが可能。 | IT予算が限られているため、公共サービス機関は、ヘッドレスCMSに必要な追加投資を念頭に置くべき。 |
ただし、以下のようなケースでは、従来またはレガシーCMSが引き続き適切な場合もあります。
- 拡張のニーズが限定的で、簡単な設定によって利点を得られるWebサイトを有する中小規模の部門や機関のWebサイト
- コンテンツ主体のWebサイト(例:ニュースサイトや教育プラットフォームなど)
- 構築済みのテーマやプラグインによる迅速な立ち上げが必要なソリューション
どのWebサイトシステムが適切か判断にお悩みでしたら、こちらの「ヘッドレスCMS/DXP/Liferay DXPの比較」の記事をご覧ください。
パーソナライゼーションによるデジタルエクスペリエンスの向上
しかしながら、公共サービスのために構築されたWebサイトの大部分は、より複雑で公共サービスゆえのニーズを抱えています。そのため、市民の関心を引きつけ、積極的に関与を促すために、従来のCMSよりも最新のCMSの持つ柔軟性を活用することが有効です。
これを効果的に行うためには、最新のCMSを、市民に優れたエクスペリエンスを提供するための基盤であるパーソナライゼーションと組み合わせる必要があります。デロイト社の調査(リンク先:英語)では、「パーソナライズされたサービスが、顧客満足度を高める上で最も重要な要因である」ことが明らかになりました。
これこそが、最新の(またはヘッドレス)CMSのもう一つの大きなメリットであり、適切なツールと連携させることで、非常に高度なパーソナライゼーションを実現するのです。
高度なパーソナライゼーションとは
パーソナライゼーション、すなわちデータを活用して、ユーザーの好みや興味に合わせてコンテンツを最適化(リンク先:英語)することは、人々の誕生からその後の私生活のさまざまな局面に関わる産業である公共サービスにとって、最も重要な機能です。
しかし、公共サービス業界では、パーソナライゼーションに関しても、デジタル化の他の分野と同様に、他の業界に追いつこうとしている状況です。マッキンゼー社(リンク先:英語)は、「連邦政府のサービスは、カスタマーエクスペリエンスの評価においてほぼ最下位、または最下位に位置しており、ほとんどの利用者はそのエクスペリエンスを『悪い』または『非常に悪い』と評価している」と指摘しています。
また、OpenText(リンク先:英語)社は、「パーソナライゼーションは、市民へ優れたエクスペリエンスを提供するだけでなく、業務における俊敏性と低コストの両立という目標を実現するものでもある」と述べています。
しかし、基本的なパーソナライゼーションではもはや不十分であるため、政府機関では、高度なパーソナライゼーション(リンク先:英語)機能を備えたシステムを活用する必要があります。データを介してユーザーを理解するには、以下のようなリアルタイムの情報を収集することが必須です。
- ユーザーの年齢や居住地などの人口統計情報
- 検索履歴、クリック数、ダウンロード数など、Webサイト全体でのユーザー行動
- ユーザーが選択した興味・関心や言語などの詳細設定
- デバイスタイプやソリューションへのアクセス日時などのコンテキスト
例えば、ある市民が固定資産税に関する情報を頻繁に検索しているとしたら、高度なパーソナライゼーション機能により、支払いオプション、今後の税制改正に関するお知らせ、期限に関するアラートといったリソースを表示する、といったことができるようになります。
高度なパーソナライゼーション機能は、自分のニーズに合ったコンテンツや選択肢が即座に表示されることで、訪問者の滞在時間を長くすることができます。パーソナライゼーションの実行による最終的な理想形は、「一人のための政府」であり、市民一人ひとりが必要な時に必要なコンテンツやリソースを確実に入手できるようにすることです。
高度なパーソナライゼーションとハイパーパーソナライゼーションの違い
ハイパーパーソナライゼーション(リンク先:英語)と高度なパーソナライゼーションは、多くのケースで言い換えが可能です。ハイパーパーソナライゼーションは、特にリアルタイムのデータや人工知能(AI)の活用について言及する際に使用される場合がありますが、高度なパーソナライゼーションについても同様のことが言えます。
最新のCMSがなければ、真に高度なパーソナライゼーションを実現できない理由
上記で述べた通り、最新のCMSは柔軟性に優れているだけではなく、オムニチャネルエクスペリエンスを実現(リンク先:英語)できるため、あらゆるユーザーに場所を問わず、パーソナライズされたエクスペリエンスを提供できます。
従来の(またはレガシー)CMSには、パーソナライゼーション機能がそもそも搭載されていないか、搭載されていても不十分である場合があります。これに対し、ヘッドレスCMSであれば、お好みのパーソナライゼーション機能と連携できます。
高度なパーソナライゼーション機能がサポートする4つのオーディエンス
最新のCMSに実装されている高度なパーソナライゼーション機能は、公共サービスに関わるすべての人に幅広く活用できます。市民や行政職員は、市民ポータルや社内ポータルといったソリューションを通じて高度なパーソナライゼーション機能の恩恵を受けられ、政府機関や政策担当者は、この機能を活用して業務を効率化し、オーディエンスについての理解も深められます。
| メリット | 市民 | 公務員 | 政府機関 | 政策担当者 |
|---|---|---|---|---|
| パーソナライズされたダッシュボードとセルフサービス機能 | 保留中の申請、地域のニュース、よくアクセスするリソースなどの情報や、 パーソナライズされた検索機能を通じて、市民の関心に応えるパーソナライズされたダッシュボード。 |
雇用情報や保険給付、財務支援といったリソースをすばやく入手できるパーソナライズされたダッシュボード。 | 市民が効果的かつパーソナライズされたセルフサービスを利用できれば、 行政機関は市民サービスチームの負担を軽減できる。 |
高度なパーソナライゼーションから得られたインサイトを活用し、 基本方針や伝達方法など、今後の政策を策定可能。 |
| 手順の効率化とガイダンス | 住所変更フォームに既知の情報を事前入力するなど、 サポート機能を備えたアシスト付きセルフサービスを利用可能。 |
業務を効率的かつ規定通りに遂行するためのカスタマイズされたトレーニングや指針を、 ポータルサイトを通じて職員に提供。 |
パーソナライゼーションを自動化することで、 申請の承認や許可の交付といった手続きを迅速化。 |
市民の最新の評価を把握することで、改善すべき政策ポイントに注力できる。 |
| ターゲット通知とインサイトの提供 | 運転免許証の更新期限が近いなど、 特定の情報を先取りしたメールやテキストでの個別通知。 |
関連する通知により、納税申告や人事評価など、 必要なタスクのタイミングを把握できる。 |
公衆衛生施策や地域プログラムのキャンペーン展開に、 パーソナライゼーションデータを活用可能。 |
データ分析により、サービスが行き届いていない層を特定し、 新たな改革の機会を創出。 |
つまり、高度なパーソナライゼーションは、優れたデジタルエクスペリエンスの中核をなすものであり、同時に「政府への信頼を高める主要な要因」となります。(リンク先:英語)
統合の課題を解消するDXPとは
しかしながら、最新のCMSの性質上、それは高度なパーソナライゼーションを実現する上で理想的な手段であるものの、そうしたツールが標準機能として搭載されているわけではありません。
デジタルエクスペリエンスプラットフォーム(DXP)の場合は異なります。DXPとは、複数の製品やツールを1つに統合し、インタラクティブで魅力的、かつ有益なカスタマーエクスペリエンスを大規模に創出するソフトウェアです。
DXPを一度導入すれば、多くの場合、最新のCMSと高度なパーソナライゼーションの両方を入手できます。これにより、総所有コスト(TCO)を下げ、テックスタックを統合できるだけでなく、厳格な技術ガイドラインを遵守することもできます。例えば、いくつかの主要なDXPはオープンソース(リンク先:英語)であり、これは一部の政府機関や公共部門で働く企業にとって必須要件となっています。また中には、最新技術の利点を享受したいものの、レガシーシステムをまだ完全に手放せない場合に備えて、統合に適した機能を提供する、Liferay DXPのようなものもあります。
事例はこちら(リンク先:英語):南カリフォルニアのバーバンク市:Webサイト全体を一新したことにより、市民からの問い合わせが減少
市民に寄り添うエクスペリエンスが未来の公共サービスを形づくる
市民の期待とニーズに応えるデジタルエクスペリエンスを提供し、公共の利益をさらに向上できるよう、市民との関わり方に変革をもたらしましょう。
適切な技術基盤があれば、高度なパーソナライゼーションにより、AmazonやGoogleのようなエクスペリエンスを提供することに注力でき、市民がデジタルサービスを利用する際の満足度も高められます。
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