東京海上日動火災保険株式会社
100万人超の内部ユーザーが利用する大規模情報ポータル基盤を最新Liferayに移行
IT企画部門、IT子会社、パートナーの連携で安定稼働を実現
100万ユーザーが利用する際に耐えられる性能面およびライセンスのコスト面、SSOへの対応、必要な機能が揃っている上で柔軟にカスタマイズ対応ができること
東京海上日動
IT部門
特徴
日本を代表する損害保険会社である東京海上日動火災保険は、日本ライフレイのLiferay DXPを活用し、従業員と保険代理店が利用する情報ポータルサイトと電子マニュアル閲覧システムを刷新しました。
挑戦
- 100万人超のユーザー環境下において、安定した稼働を実現
- 操作性と検索性の向上による代理店のポータルサイト利用率増加と、ヘルプデスク対応業務の減少
結果
- ミッションクリティカルなシステムに保管されている大量な文書類を安全・確実に移行
- 従来から運用していたCMSシステム環境を最新のLiferayにアップデートし操作性が向上
- ポータルサイト内の導線の見直しと掲載文書の鮮度管理でユーザービリティが向上
- サイトの運用・保守コストを削減
開発パートナー
東京海上日動システムズ株式会社
株式会社日立製作所
株式会社オキシゲンデザイン
100万人超が利用する「情報ポータルサイト」と「オンラインマニュアル」
東京海上日動火災保険(以下、東京海上日動)は、1879年に創業した日本初の損害保険会社です。国内では火災保険、自動車保険、海上保険など幅広い損害保険商品を提供し、グループ全体では生命保険事業や海外事業、資産運用なども手掛け、世界トップクラスの保険グループとして活動しています。
同社では、従業員および保険販売代理店の約100万人超のユーザー向けに、内部向けのWebサイトである情報ポータルサイトと、マニュアル・約款類を掲載したオンラインマニュアルを約20年前から運用しています。
情報ポータルサイトでは、保険に関する情報をまとめた文書や、社内や代理店に対する重要な通達や指示事項が発信されます。オンラインマニュアルでは、商品を引き受ける際の業務フローや事故があった際の支払いの決まりなどを記した「保険のハンドブック」や、システムの使い方のマニュアル類が掲載されており、それぞれが外部の代理店向けシステム、マニュアル執筆システム、シングルサインオン(SSO)認証システム、ユーザー管理システムと連携して、立場や職掌に応じ必要なページおよび文書を閲覧できます。
利用者の増加とシステムの老朽化に伴い移行を検討
2つのサイトは現在、従業員および保険販売代理店の約100万人超のユーザーが利用しており、ページ数は情報ポータルサイトが約10万文書、オンラインマニュアルが約1200マニュアルにのぼります。法律や商品が変わるごとにそれらの内容は変更されていき、情報ポータルサイトでは1日平均で約300件、オンラインマニュアルは10-20件程度の情報が更新されている状況です。
両サイトは日々の業務に直結するミッションクリティカルなシステムであることに加え、社員や代理店向けに必要な情報を届けやすくするために社内で情報の鮮度管理を行うなどの業務も必要で、サイトの運用にはシステム管理面以外にもメンテナンス業務で一定の負荷が生じています。
両サイトには1日平均で約数万件レベルでアクセスが発生しますが、ポータルの利用者数自体が毎年増加し、それに伴ってこの10年でアクセス数もどんどん増えていきました。旧来のシステムは情報ポータルサイトが2015年、オンラインマニュアルが2017年に構築されたものでした。サイトの利用者が増加するとともに、コロナ禍による行動様式の変化でペーパーレス化が進み、特に2020年からはサイトに掲載する情報とそこへのアクセスが一気に増えていました。
それに伴い同社では、サイトの動作が遅くなるとともに、一部ユーザーからは、「必要な情報が見つけにくい」という声が増えるようになり、社内のヘルプデスクへの電話の問い合わせも増えて改善が求められていたといいます。
ポータルの管理を担当するIT企画部門の担当者は、「長年の運用の結果、ポータル上では情報の探しにくさと、サイトの動作性能、保守の難しさおよび業務負荷の増加という形で、利用者側と運営側の両面から複数の課題が表面化していました。さらにインフラレイヤーでもOSのサポート終了が控えていたため、2021年から2つのサイトを刷新する検討を開始しました」と当時の様子を振り返ります。
事業継続性をはじめ厳しい要件をクリアしたLiferayを採用
従来のシステムは、LiferayのOSSコミュニティ版をベースに開発された他社のパッケージを活用し、自社の業務に合わせて大量にカスタマイズをして構築していました。刷新にあたり同社のIT企画部門では、IT戦略・開発・運用などを担当する東京海上日動システムズと共同で、調査会社の評価上位製品群の中から最適なものを検討。両社で詳細な要求定義を実施し、機能面や国内サポートの面、コストの面で総合的に判断した結果、Liferayを採用することを決めました。
採用の理由として東京海上日動のIT企画部の担当者は、「100万ユーザーが利用する際に耐えられる性能面およびライセンスのコスト面、SSOへの対応、必要な機能が揃っている上で柔軟にカスタマイズ対応ができること」を挙げています。他にも、システム構築に当たって金融機関に求められるガイドラインやエンタープライズグレードの性能を満たしつつ、文書へのアクセス権の付与が可能であったことも選択時の大きなポイントで、「Liferayが最適な製品と判断しました」と述べています。
そこからシステム構築パートナーとして、日立製作所が参画。Liferayのコンサルティング会社であるオキシゲンデザインも協力し、2022年6月から要件定義を行い新しいシステムの構築を開始しました。その際に最も大変だったのが、データの移行だったとシステム構築担当者は明かします。
ポータル上には20年来積み上げられてきた記事やコンテンツがあり、長年の運用の中で不必要な文書類やイレギュラーな仕組みも含まれていて、情報の精査で膨大な作業が生じました。またデータの移行では、古い文書フォーマットを新システムに移す際にレイアウトが崩れるリスクがありました。文書の崩れ方によっては内容の誤認を招く恐れがあり、さらにアクセス権限の設定にずれが生じると情報漏えいにつながる可能性もあるため、移行する文書を一つひとつ確認する慎重な作業が必要でした。
システムの構築にあたっては、旧システムはスクラッチ寄りであったのに対し、今回は極力Liferay側で用意されている潤沢な標準の仕組みを活用し、綿密な設計のもと効率的に作業を実施しました。
一方でカスタマイズ機能を活用し、情報の検索性を高める機能も新たに実装しています。従来のキーワード検索では、ある単語が複数の意味を持つ場合、目的とは異なる情報まで検索結果に表示されてしまう課題がありました。そこで新システムでは、文書に「タグ」を付けて分類し、ハッシュタグによる検索を可能にしました。これにより、ユーザーは単純なキーワード検索よりも的確に必要な情報にたどり着けるようになっています。
「ミッションクリティカルなシステムのため、プロジェクトは1年8か月をかけて慎重に進めましたが、ずっと東京海上日動、東京海上日動システムズ、日立製作所、オキシゲンデザインの4社で密にコミュニケーションを取りながらチームで開発できたため、様々な苦労がありつつも成功裏に完遂できたと感じています」と、プロジェクトリーダーを務めたIT企画部の担当者は語ります。
稼働も安定しポータルサイトの利用率も向上
新しい情報ポータルサイトとオンラインマニュアルは、2024年2月に稼働を開始。運用の過程で随時性能をアップデートして現在に至っています。
稼働時は、綿密な計画の下での移行を実施したことで、システム変更の際もほぼサイレントリリースの形で移行できたといいます。稼働後、両サイトの利用率は勢いよく上昇しました。当初の計画では、TPS性能を従来の5倍に拡張してリリースに臨みました。それでも現場には不安定さが残るという厳しい状況だったため、この課題を看過せず、迅速に更なる性能拡張が実施されました。この徹底した対応によって、システムの安定稼働という目標を確実に実現しました。何より、事前の設計段階で検索方法やポータルサイト上での導線の工夫をしたことで、ユーザーが求める情報にたどり着きやすくなっているという声が聞かれているとのことです。
またIT運用面では、従来のアプリケーションサーバー台数を1台削減してサーバーコスト削減につながったことに加え、標準機能ベースの開発でアーキテクチャーの最適化を実現するとともに、後々の保守性の向上が見込める結果となりました。さらに、今回からLiferayのサポートプログラムに加入したことで、手厚いサポート体制が構築されました。その結果、システム担当者は障害発生時の対応に関する不安から解放され、運用における大きな安心感を得られるようになりました。
今後東京海上日動では、自己解決型ポータルの実現に向けて、サイト上でのユーザーの問題自己解決率の向上と、ヘルプデスクでの照会応答業務の効率化を目指していく計画です。IT企画部の担当者は、「これからもLiferayの新たな機能の活用も含めて、サイトの機能改善をどんどん進めていきます。同時にミッションクリティカルなシステムなので、安定稼働も続けないといけません。それらを実現するにあたり、これからも日本ライフレイやパートナーと一体となって取り組みを進めていけることを期待しています」と述べています。