デジタルエクスペリエンスプラットフォーム(DXP)とは?

デジタルエクスペリエンスプラットフォーム(DXP)は、優れたカスタマーエクスペリエンスの創造を最終目標とし、デジタルトランスフォーメーションを推し進める企業のニーズを満たす新しいエンタープライズソフトウェアカテゴリです。
目次
DXPが挑む課題解決:より優れたカスタマーエクスペリエンスの提供
DXPはそれ単体でも機能する製品ですが、多くの場合、他製品と連携して導入されます。DXPは企業が業務オペレーションをデジタル化し、一貫したカスタマーエクスペリエンス(CX)を創造し、あらゆる顧客行動インサイトを集約するためのアーキテクチャを提供します。
今日のビジネスでは、以下のような様々なトレンド要因が、多くの企業を、より顧客中心なビジネスモデルへと根本から変革しようと動かしています:
- 顧客が企業と接触する上で、デジタルチャネル(Web,スマホ,ソーシャルメディア)が圧倒的な影響を持つようになった
- 顧客はGoogleやApple, Facebookが提供するような非常にレベルの高いエクスペリエンスを求めている
- ソーシャルメディアは、企業が意図していない顧客への接触やエンゲージメントをも可能にしている
- モバイルデバイスは、即時性と場所の自由さを提供し、企業が様々な方法で顧客と接触し続けることを可能にする
- データインサイトは、高度にパーソナライズされたエクスペリエンスを提供する、オーディエンスターゲティングを可能にしている
- デジタルテクノロジーは新興企業が従来の事業やサービスのあり方を覆すことを可能にし、より優れたCX)を提供できるようにしている。交通機関や宿泊施設における、UberやAirbnbなどが顕著な例である。
このように、デジタルテクノロジーは、企業が直面するリスク(例えば、新興企業の台頭)への対応と、新しい機会(デジタルビジネス)の創出、両方に貢献していると言えます。
関連ホワイトペーパー:デジタルエクスペリエンスプラットフォーム - それはデジタルトランスフォーメーションを支える基盤
マーケットの背景:従来の製品カテゴリから生まれたDXP
現在、DXPとして認識されている製品には、もともとはコンテンツ管理システム(CMS)、ポータルサーバ、そしてEコマースサーバといった、従来の3つのカテゴリーより派生したものが多く存在します。これらのルーツは、それぞれが提供するDXPパッケージの方向性を表しています。
- CMSから発展したDXP製品は、マーケティング部門やクリエイティブエージェンシーのニーズに重点を置いています。彼らが収集する顧客データは匿名であることが多く、属性に応じてオーディエンスセグメント化を行います。これらの製品は、顧客の意識と関心を高め、ターゲティング機能でキャンペーンを提供して購入意欲を高めるといった「顧客獲得」における課題解決に適しています。特に、販売サイクルが短く、コンバージョンやユーザ母数の多いB2C(小売、ファッション)の領域で効果的です。
先進的なCMS派生のDXPはWEB分析、ユーザセグメント、広告キャンペーン、メルマガキャンペーン等の強力な機能を提供しています。これらはプラットフォームスイート(パッケージ)として提供されることが一般的ですが、元来それぞれ別の製品であり(他のベンダーから購入されている可能性が高い)、よく相互統合されていない可能性もあります。
一部のCMS派生のDXPは、シングル・サインオン等のポータル特有の機能や、Eコマース機能なども備えています。後者は買収やパートナーシップによって獲得した機能であることが多いです。
- ポータルから発展したDXP製品は、顧客ポータルなどの提供を背景にしてきたことから、顧客獲得後・販売後の長期的な顧客関係を醸成させること適しています。顧客のデータは各個人固有で、堅牢なセキュリティーで保護されています。これらのDXPは、企業が顧客のロイヤリティを育て、継続させ、そしてリニューアルへ繋げるための要因理解をサポートします。 Net Promoter Scoreといったよく知られた指標の計算するのにも役立つでしょう。また、自社や代理店などが療法が関わるような顧客サービスを提供するのにも適しています。
また、ポータル派生のDXPは、デジタルワークプレイスの機能を備えており、パートナー・サプライヤー・フランチャイジーといった特有の対象との関係構築にも適しています。 デジタルトランスフォーメーション戦略には、優れたCXの創造において重要な役割を果たす、上記グループすべてを網羅することが求められるケースもあります。
Forrester社によると、ポータル出身のDXPは、インテグレーション性に優れており、これはビジネスオペレーションにおけるデジタルトランスフォーメーション進める上とても重要な要素とされています。再利用可能なサービスとモジュールの管理は、戦略が迅速に変化し、進化する場面で大変役立ちます。
ポータル出身のDXP製品の一部には、コンテンツ管理、ターゲティング、モバイル対応、ワークフローやフォームといった、幅広い機能セットが含まれています。その他の製品は、主にプレゼンテーション層の機能に集中しています。 - ECから発展したDXP製品 は、小売業および関連業界のオンラインショッピング構築に利用されます。Eコマース特有の製品情報のWEB出力インターフェースに加え、これらの製品は通常、在庫管理、ショッピングカート、決済サービスとの連携、注文履歴などに関する機能も提供しています。これらの機能は、デジタルエクスペリエンスの管理と直接的には関連しませんが、優れたデジタル小売サービスの体験の創造には、こうしたコマース出身のDXPが備えている機能とのシームレスな統合が求められています。
また当然、EC出身のDXPにも、隣接する機能が追加されており、例えば多くのコマース製品には、カタログ内の製品プロモーションを強化するために、コンテンツ管理機能が備わっています。
従来カテゴリごとのDXPベンダーマトリクス
CMS出身 | ポータル出身 | Eコマース出身 | |
---|---|---|---|
代表的なベンダー |
アドビ エクスペリエンスマネージャー(旧 DayCQ5; アドビマーケティングクラウドの一部) サイトコア エクスペリエンスプラットフォーム(旧サイトコアCMS) |
Backbase カスタマー・エクスペリエンスプラットフォーム ライフレイ デジタルエクスペリエンスプラットフォーム(旧ライフレイポータル) |
Hybris(SAPが買収) Broadleaf Commerce Demandware |
対象ビジネス |
BtoC |
BtoB あるいは BtoC |
BtpC |
業界 |
小売、ファッション、広告、メディア、放送、エンターテインメント、ジャーナリズム |
保険、政府、小売り銀行、製造 |
小売、ファッション、食品、音楽/エンターテイメント、電子機器、旅行、おもてなし、電話回線 |
顧客関係ステージ |
購入前 |
リード育成、 |
購入前、購入完了、リピート |
長所 |
このセグメントのリーダー製品の中には、優れたメールマーケティング、分析、広告費のトラッキング機能が備わっている。 |
顧客体験を向上させるために必要な、システムインテグレーション性に優れており、顧客データも単純なセグメント化だけでなく、個々人のデータとして格納される。 |
Eコマース特有の、オンライン決済にまつわる機能が備わっている。 |
短所 |
顧客データやプロファイルを持たない製品の場合、顧客向けサービスの設計にはあまり適さない。 |
ユーザーエクスペリエンスが乏しかったり、モバイルのサポートが不足している古い製品の場合、従来のポータル製品のネガティブな側面が残っている。 |
ターゲティング能力が低く、コンテンツ管理が複雑な一部製品では、より深層でのインテグレーションが考慮された設計になっていない。また、購入以外での顧客ライフサイクルをサポートする機能が欠けている傾向がある。 |
DXPは、これまでの製品と何が違うのか?
一見DXPは、CMSやポータル、Eコマース製品のリブランド版のように思われるかもしれません。しかし、DXPベンダーたちは、新しい顧客の期待に応え、新しいテクノロジーを活用するために、これら製品の従来の機能とは異なるアプローチを取っています。
デジタルトランスフォーメーションか、それともデジタル”体験”か?
DXPを選択する際、企業はビジネスオペレーションの根幹から変革する準備が整っているのか、あるいはマーケティングとブランド認知度に優先度を置くのか、決定する必要があります。これらの優先事項はDXPベンダーそれぞれの強みとか変わってくるからです。
Forrester社アナリストのリズ・ハーバート氏は、プレゼンテーション「リアル・デジタル変換のためのパートナーシップ戦略(More Than Meets the Eye: Partnering Strategies for Real Digital Transformation)」にて、「本当の意味でのデジタルトランスフォーメーションは、エクスペリエンスとオペレーション・コアの両方が対象となる」と述べています。魅力的なウェブサイトやモバイルアプリを提供することは良いことですが、より優れたCXの構築には、顧客を中心に、様々なプロセスを再度最適化することが求められます。
そうすることにより、基本的なパーソナライゼーション体験から、高度なワークフロー設定、迅速に再構築が可能なビジネスサービスの完全なモジュール化など、さまざまな方法で顧客ニーズへ対応することができるようになります。
しかし、すべての企業が上記のようなレベルの変革に向けて準備がされているわけではありません。その間にも、まずは個人向けのオファーを可能にするるために、オーディエンスターゲティングを始めたいと考えているかもしれません。コンテンツ管理システムを持っている一部のベンダーは、その要望をうまくやり遂げることができます。
理想としては、プラットフォームがオペレーションとマーケティング機能の両方を備え、カバーしており、デジタルマーケティングから開始しても、オペレーションの変革準備が整った際に、第2のベンダーの選定プロセスを踏まずに済むことではないでしょうか。
また、これらの目標達成の方法は1つだけではありません。あらゆるカテゴリから発展したDXPと、総合アーキテクチャのインテグレーションや、モジュールサービスを組み合わせることで、達成することも可能です。