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デジタルトランスフォーメーション

デジタルトランスフォーメーション(DX)推進戦略とは

今後、ビジネス発展を考える上で必要不可欠なデジタルトランスフォーメーション(DX)。世界中の企業でその重要性、必要性が認知され、デジタル技術を用いた新しいビジネスモデルが日々誕生しています。しかし、日本企業は他の先進国の企業と比べて、DXへの着手が大幅に遅れています。日本においてDXが成功するためには、日本企業はどのような戦略を取れば良いのでしょうか。本記事ではその疑問を解決します。

はじめに


今後、ビジネス発展を考える上で必要不可欠なデジタルトランスフォーメーション(DX)。世界中の企業でその重要性、必要性が認知され、デジタル技術を用いた新しいビジネスモデルが日々誕生しています。

多くの日本企業もDXへの取り組みを行っていますが、推進状況は好ましくありません。経済産業省もDXの遅れを危惧し、2018年にDX推進ガイドラインを策定しましたが、ほぼ状況は変わっていないと言えます[1]。さらに、アビームコンサルティングが、大手企業の役職者500名以上にDXの推進状況に関する調査を行った結果、DXに成功したと実感している企業は約7%と非常に少ない現状が明らかになっています[2]。

取り組みの結果、DXに成功したと感じている企業の割合

データ引用:アビームコンサルティング株式会社

本記事では、「どうしたらDXが成功するのか?」という疑問を解決するために、DXを成功させるための戦略について解説を行っていきます。

デジタルトランスフォーメーション(DX)を成功させるための戦略とは


企業のDXを成功させるためには、企業が組織として一つになり、連携を取ることが非常に大切です。従業員間のコミュニケーションを円滑にして、DXの実現性を高めるためには、企業は部門ごとにこれらの点を意識する必要があります。

  1. 経営トップの推進力
  2. 事業部門の柔軟性
  3. IT部門のサポート力

「経営トップの推進力」「事業部門の柔軟性」「IT部門のサポート力」それぞれに必要な戦略とはどのようなものなのでしょうか。以下、具体的に解説していきます。

 

1. 経営トップの推進力

昨今、DXを一部の部門で実施する事例がよく見られますが、本来DXが「組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化」或いは「顧客起点の価値創出のためのビジネスモデルの変革」を指していることから、それら“DX”と呼ばれているものは、そもそもDXではありません。真の意味でDXを推進するためには、部門単位でなく、全社単位でDXを推進する必要があります。

日本企業のDX実施状況

出典:経済産業省

そこで、経営トップには以下の2つの行動が求められています。

■ 経営戦略・ビジョンの提示

まず、経営トップはDX推進に対する具体的な経営戦略とビジョンを策定する必要があります。そのために、経営トップは世の中の流れをいち早く察知し、想定される社会変化に対応するために、データとデジタル技術の活用によって、社内外の事業においてどのような価値提供ができるか、或いはどのようなビジネスモデルを構築すべきかを柔軟に熟考する必要があります。そして、経営戦略やビジョンを従業員に提示することで、企業全体で同じ方向を向いて必要な改革を行うことができるように社内環境を整えていくことが求められています。提示された経営戦略やビジョンが社内で共有され、従業員内でのコミュニケーションが円滑になると、比較的スムーズなDX推進が可能になります。

経営戦略を策定する際、投資等の意思決定が非常に重要です。DXは投資効果がすぐに現れにくいため投資が躊躇される動きもありますが、DXに対して投資する際は、コストのみでなくビジネスに与えるプラスのインパクトを考慮して判断することが重要です。プラスのインパクトはさまざまな形で現れるため、定量的なリターンやその確度を期待しすぎるのもよくないでしょう。DXが実現できずに市場から排除されるリスクなど、さまざまな可能性と向き合い、総合的に投資の意思決定を行いましょう。

■ コミットメント

また、DX推進に当たっては経営トップ自らが掲げた戦略に対して強い意志を持ってコミットメントすることも重要です。経営戦略・ビジョンの提示だけでは口だけになってしまい、従業員は動きません。DXを成功させるには、従業員の反発を招くような企業全体の抜本的な見直しを行う必要が出てくることもあるでしょう。その局面で、従業員の賛成を得ることができるかどうかは、経営トップの普段の取り組みにかかっています。大きな企業文化の変革の中、必要な変革を実行するに当たって経営トップ自らがリーダーシップを発揮し、覚悟を持って経営層や各部門を統率し、牽引していけるかがDXを成功させる上で非常に重要になってくるのです。

 

2. 事業部門の柔軟性

DXを成功させるためには、エクスペリエンスの重視が必須です。ここではCX(カスタマーエクスペリエンス)とEX(従業員エクスペリエンス)の2つに着目して考えます。CXは、ある商品やサービスの利用における顧客視点での体験のことで、企業はCXを重視することにより、顧客が企業に対して感じる価値の向上を期待することができます。また、EXは従業員が社内で受ける体験の全体を指し、EX重視により従業員の企業に対する満足度を向上させることができます。

CXを重視すべき理由は、DX自体が顧客起点の価値創出のためのビジネスモデルの変革を目指すものであるためです。CXを重視した事業が提案され、それをデータやデジタル技術の力で実現することができれば、それはDXといえるでしょう。急速に変化する世の中に対し迅速かつ柔軟に適応し、その状況下で顧客中心に思考できる企業は、DXにも適切な対応ができます。

EXを重視すべき理由は、社内の貴重な人材に最適な労働環境を用意することがDXの実現に重要であるためです。CXを重視したアイデアやサービスを生み出すことができるのは、変化に迅速に対応し、高いソフトスキルを持った人材であり、彼らはDXを成功へ導くためにもっとも重要な要素のひとつです。DXを推進する上で最適な人材がいなければ、いつまで経っても取り組みは進みません。企業が質の高い人材に企業に価値提供し続けてもらうには、彼らが企業で働くことに対して満足している状態を作り、維持する必要があるのです。

また、EXを重要視することで業務環境の改善が促進され、「組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化」を指すDXも期待することができます。これを達成した会社には、米国のコーチ社ドミノピザ社があります。

以上から、CXとEXの重視がDXの成功に繋がっていることが分かります。

CXとEXの重視

エクスペリエンスを重視した改革を行う上で、大切なのは変化を恐れないマインドです。例えば2020年には、コロナによるテレワークや外出自粛といった急速な変化に対応し、勤務環境を迅速に変える必要がありました。この時、Zoomなどのデジタルコミュニケーションツールの導入ができた企業のCEOのうち68%が、コロナ前に比べて従業員とのつながりをより強く感じています[4]。逆に、コミュニケーションツールの導入に遅れた企業は、企業内の意思疎通がうまくいかず、コロナによる大きなダメージを受けることになってしまいました。このように、ITシステムのみならず企業文化を変革して固定観念を破壊することが企業に好影響を与えることが明らかになりました。

デジタルトランスフォーメーション(DX)における日本企業と海外企業の取り組み方とはにも記載した通り、日本企業はコロナの影響により、社内体制や社内コミュニケーションのIT化を進めることができたものの、顧客に対する価値提供を実行する段階にはまだ至っていません。迅速なITツールの導入ができた企業が従業員との関係を向上できたように、社会の変化に迅速に対応して顧客への価値提供ができる企業は、企業価値を向上することができるでしょう。

 

3. IT部門のサポート力

また、DXを成功させるためには、企業ごとに適したITシステムの導入、そしてITシステムを扱う人材の教育が必要です。どれだけ有用なITシステムであっても、それを活かすことのできるITリテラシーを持った人材がいなければ、効果を発揮しません。また、社内にCIO(最高情報責任者)、CDO(最高デジタル責任者)などDX推進に対して責任を取る役職を新たに設置することにより、IT部門が提供できる価値を最大化することができるでしょう。

■ ITシステムの構築

DXを推進するには、経営戦略やビジョンの実現の達成に向けて活動する各事業部門と、データやデジタル技術の活用の取組を推進・サポートするDX推進部門、そしてベンダー企業の連携が重要になります。

現在、多くの日本企業がDXを前提としたITシステムの導入に着手してはいるものの、成果が出ずに途中で取り組みを止めてしまう企業や、取り組み続けていても明確な成果に繋がっていない企業が多く見受けられます。掲げたビジョンを実現するためには、まずは社内のITシステム体制を把握し、経営戦略を実現するために必要な全社的ITシステムを定義した上で、それに適したITシステムを提供するベンダーを選定し、システム導入に向けて対話していくことが求められます。

企業がITシステムに詳しくないためにベンダー企業に要件定義を委ねていては、DXの成功を期待することはできません。企業は、新たに導入するシステムと既存のITシステムとの円滑な連携を確保するために、社内のITシステム体制を把握し、DXによって実現したい具体的な事業企画や業務企画を明確にした上でベンダーにシステム導入を依頼する必要があります。この際、ベンダーからもさまざまな提案がされますが、「既存システムとスムーズに連携できるか」「企業の目的とはズレていないか」という観点を大切にすることで、企業にとって最適な形でDXを実現することができます。

既存システムとの連携とビジョンの達成

システム導入後は、従業員が新しく構築したシステムを適切に扱えるように、ガイドラインを明記したマニュアルを作成し、ITシステムを最大限に活用していくための体制を整えることが重要です。

■ IT人材の確保、育成

DX推進のためには、ITシステムを構築するだけでは不十分で、それを活用することのできる高度なITリテラシーを持つ人材の確保、育成が重要です。ITシステムに詳しいSIerのサポートを受けることも一つの選択肢ですが、自社でITリテラシーの高い人材を雇用または育成することは大きなメリットがあります。

まず、自社のIT人材は自社の業務内容やシステムを深く理解しているため、自社に合ったITシステムの構築・運用ができます。ITシステムを適切に連携させることで、企業システムの一貫性を保てるため不具合も生じにくくなり、業務効率の向上にも繋がるでしょう。

また、社内にITに詳しい人材がいれば、不測の事態の際にも迅速かつ柔軟な対応が可能です。構築から運用まで外部委託している場合、システムに障害が出た際に、それを復旧させるために追加費用や時間がかかる場合があります。何日間、何週間も待つ必要があったり、別途高額な費用が請求される、といったリスクは、自社にIT人材を確保することで軽減できます。社内人材の育成には費用と時間がかかりますが、企業としてDX推進を迅速に行うためには、1番の近道と言えるでしょう。

■ CIO、CDOの設置

日本ではあまり馴染みがないCIO、CDOの設置もDX推進に向けた重要な戦略のひとつです。CIOは、情報技術に関する責任者でIT導入を推進する役割を負い、CDOはDXの戦略策定と実行に責任を負う役職で、他部門と協働してデジタル戦略を進めていく役割を担います。総務省の調査では、日本は海外企業に比べて、これらの役職の設置率が大幅に低いことがわかりました[5]。特にDXとの関連が深い役職とされるCDOの設置率は、5.0%の日本に比べて先進国のイギリスでは27.4%と、約5倍以上もの差があります。

CIOとCDOの設置率

データ引用:ICTによるイノベーションと新たなエコノミーに関する調査研究結果(平成30年)

これからのDX激戦化につれてCIOやCDOの重要性に対する認識が高まることにより、これらの役職が積極的に設置され、企業全体のDX推進が加速することが期待されています。

IT部門とは少し離れますが、CTO(最高トランスフォーメーション責任者)をCDOとは違う役職として設置する企業もあります。その場合、CTOはCEOの配下に就いて経営の視点からDXの実行に責任を持ち、CDOはデジタル技術を全社的に推進するという役割を担っています。

まとめ


DX推進を成功させるためには、企業が一丸となって協力しあうことが重要です。企業が組織としてまとまりをもち、明確な目標を掲げて着実に成長していくことで、DXが実現可能になるでしょう。

参照文献


導入事例・資料

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