デジタルトランスフォーメーション(DX)成功のための戦略とは

デジタルトランスフォーメーション(DX)成功のための戦略をわかりやすくご紹介します。
目次
デジタルトランスフォーメーション(DX)成功への6つの柱
「【完全版】デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?わかりやすく解説」にて紹介した通り、DXに成功するためには、DXについて理解・定義し、しっかりとして戦略を立て、実行することが重要です。
世界的な経済誌フォーブスによると、企業がデジタルトランスフォーメーションを成功に導くためには、最新のテクノロジーを導入するだけは成功できず、次の6つの柱を理解してDXを推進する必要があります。[1]。
- エクスペリエンス
- 人々
- 変化
- イノベーション
- リーダーシップ
- 文化
1. エクスペリエンス
昨今よく耳にするカスタマーエクスペリエンス(CX)だけでなく、従業員エクスペリエンス(Employee Experience = EX)も大切な要素です。CXの大切さについては、ディズニーやアップル、スターバックスといった、顧客にユニークな価値を提供し、深い関係を築いて成功を収めている企業を見れば一目瞭然かと思います。
しかし、顧客にサービスを提供する従業員の満足度が低いと、イノベーションが起きにくくなり、顧客にとって価値のある製品やサービスを創造・提供することも難しくなるでしょう。そのため、企業はCXだけでなく、EXも含めたエクスペリエンスの向上に力を入れる必要があります。
2. 人材
人材は、DXを成功に導くために一番重要な要素かもしれません。最適な人材がいない、または従業員のことを軽視している企業では、DXは上手くいかないでしょう。AIや機械学習など人の代わりをする様々なテクノロジーも開発され、実際に利用されていますが、アイデアやユニークなサービスなどは「人」によって生み出されるため、高いソフトスキルを持った人材の育成や雇用、また活用することが重要となります。
3. 変化
企業が変わらずして、DXは上手くいきません。日本企業は変化を恐れ、新たなことにチャレンジすることを躊躇する傾向にありますが[2]、経営層が企業を変えるという強い意志を持ち、行動に移さない限り、新しいテクノロジーを導入しても宝の持ち腐れとなってしまいます。
4. イノベーション
イノベーションには、破壊的イノベーションと持続的イノベーションの2つがありますが、その種類に関わらず、イノベーティブ思考を持っていることがDX成功の鍵となります。イノベーションが起きやすい環境とは、従業員間のコミュニケーションが取りやすく活発で、風通しが良く、生産性の高い職場とされています。[3]。そのため、1〜3の3つの要素が、イノベーションの起きやすさを決める重要な指標になるでしょう。
5. リーダーシップ
DXに限らず、企業のCEOが関与していないIT戦略のほとんどは失敗に終わります[4]。このことから、企業のトップがリーダーシップを執り、DXのプロジェクトを進めない限り、DXを成功へ導くことは非常に困難となるでしょう。
6. 文化
ここまでご紹介した5つの柱は、「文化」という言葉にひとくくりにすることができます。例えば、「DX成功のために、どのテクノロジーに投資すればいいのか」という質問に対して、答えは「企業文化」から始まるでしょう。企業に優れた人材がいて、リーダーシップもあり、イノベーションや変化に対して寛容な企業文化であれば、おのずと良質なCXやEXも提供できるようになるため、DXが成功する可能性が高くなります。
デジタルトランスフォーメーション(DX)に必要な4つのポイント
DX推進において、経営トップ層のコミットメントが不可欠となります。DXに成功している海外企業においては、CDO(Chief Digital Officer)やCTO(Chief Transformation Officer)など企業のトップ層が、DX推進の指揮を取っています。
そのことを踏まえると、DXを推進する上で最初に必要なポイントとしては、次の4つです。
- 経営トップ層の「将来事業がなくなるかもしれない」という危機感
- デジタル技術をどうビジネスに生かし改革を進めるか、明確な経営戦略
- 事業部門がオーナーシップを持ちプロジェクトに参画する
- ユーザー企業自ら、要件定義や技術選定の判断を行い、その成果を継続的に評価し続ける体勢
これらのポイントを抑えないままやみくもにDXを推進すると、下記のリスクが発生してしまうでしょう。
- トップ層から明確な意図が示されないまま試作や検討が繰り返されるだけで、DXの実践に繋がらない。
- サイロ化されたシステムに対して最適化や標準化を試みても、事業部ごとに最適化されたシステムで、現状問題なくオペレーションが稼働している各事業部が抵抗勢力となり、DXが前に進まない。
- システムがビジネスに貢献できているか、という継続的な評価と、そのフィードバックに対して素早く変更可能なシステムや開発体勢がなく、新システムを導入しても短期間で陳腐化する。
これらの抵抗や課題に対する、トップ層の強いコミットメントが、DXを推し進めていく上で必要不可欠となるでしょう[5]。
デジタルトランスフォーメーション(DX)推進を強力に支援するプラットフォーム
日々変化する今日の環境で、柔軟に対応し続けるには、ユーザー企業とベンダー企業間の密接な連携も重要となります。
しかしながら、ユーザー企業がベンダー企業(またはSIer)に要件定義からの請負契約を依頼してしまうことが少なくありません。この関係性では、ユーザー企業も結果へのコミットが低く、ベンダー企業は曖昧なゴールと仕様に対する製造責任リスクを回避するために、ユーザー企業の要求に無条件で従う方向となり、結果として使いづらい、変更しづらいシステムができあがることになります。
デジタルトランスフォーメーションを成功させるには、ユーザー企業がビジョンと要件の決定に責任を持ち、開発を担当するベンダー企業は、新たなビジネスモデルにユーザー企業と共に取り組むパートナーとして関わっていく、といった協力体勢が求められます。
ユーザー企業、ベンダー企業共に、「納品して終わり」という考え方から、システムを構築・検証し、システムがビジネスに価値をもたらし続けるという循環を作り出す意識を持つことが、真のデジタルトランスフォーメーションの基礎に繋がります。
その基礎の上に、実際に変化するビジネスに価値をもたらし続ける開発基盤、プラットフォームが必要になります。詳細は「ビジネスに価値をもたらし続ける開発基盤、2つの視点」にて別途紹介しています。
参照文献
[1] Forbes, “Understanding The Six Pillars Of Digital Transformation Beyond Tech”
[2] HIP, ”なぜ、日本企業では「デザイン思考」が進行しない?東大 x RCAの教授が語る”
[3] Forbes, “How Offices Are Innovating To Improve Our Happiness, Productivity And Well Being”
[4] Forbes, “Three Reasons Why CEOs Need To Be More Vested In Digital Transformation”
[5] 経済産業省, “DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~”